無質量置き場

星と写真と独り言

君にとっての完璧な正解を

選び抜きたいと思う。

感想である。

先に言っておくが、勿論そんなものはない。

絶対にない、とまで言ってしまってもいいんじゃないか?

 

ざっくりと書くが、少し前、仕事上の縁をざっくりと切った。

 

大きいトラブルがあったわけでもない。気さくな友人グループの内の1人であり、2年ほど前から私に仕事を頼んでくれていたのだが。

結論から言うと、私にとって『正解』の展開にはならなかった。

 

彼(仮に、Oとしましょう)は音楽活動をしていて、自らのライブの撮影などを時々依頼してくれた。しかし私がレンズを向ける中、スポットライトに焦されながら歌声を絞り出すOはいつも煮詰まっているようだった。

私は、煮詰まっている彼をいつもの様に撮影している自分に『価値』を感じられなかった。
私はただ、死にたがってるサラリーマンを乗せて会社まで走る電車の様だった。

本当は、急にレールを切り替えて海まで走らせてみたい。
その方がきっと気晴らしになるだろう。
でも電車にそんなこと許されてないし、君も困るだろう。

そう思いながら”わたし鉄道”は1年くらい運行していた。

本当は君も、変わらない景色が流れる事にうんざりしていたんじゃないか?

 

だから、いっそのことやめてしまおう、と思い、『この路線は廃線にするので、別の電車か、バスを使ってください』と言った。

 

まあ、自分の我儘だ。
もしこれが実際の会社員だったら『おい!ダイヤ通り運転しろよ!』と喧喧囂囂だろう。だけどなんと言うか、こっちの方が『正解』に近い、と列車を車庫に見送りながら私は思ってしまったのだ。
本当に会社に行きたいなら自転車を漕いでも行くだろう。(だれかの記録がどうしても必要なら、別の人にも頼むだろう。と言う意味で。)

というか、路線を変えてでも撮影”されて欲しかった”のだが、結局そうならなかった。

 

誰かのスマートフォンで撮られた活動休止ライブの映像は、彼のインスタグラムにアップロードされている。

 

ここで言う『正解』の概念に感情はない。『合理的』の方が言葉としては近いだろう。『不正解』は『不毛』に近い。つまりこれ以上やっても意味はない。

これは売れなかったOらが悪いって言う話じゃない。自分含め、売れてないアーティストの友人なんて周りにたくさんいる。だけど、皆その過程も楽しんで生きている(と感じる)。私の拙い脳内コンピューターは、狭い劇場を楽しんで飛び回る友人を、安いスタジオに籠もってレコーディングした新曲が最高の仕上がりだった友人を、碌に眠れないままインディーズ映画の撮影に向かう友人を見て正解のランプを光らせるのだ。

カメラを抱えるだけで君の背中を押してあげられない私にも、赤いランプは点灯した。

”本当はもっと、君は自由に表現できる”なんて誰が決めるんだろうな。

きっと、君が気づいてなかったとしても、私でさえない。

 

Oにとっては、今までの生活が途方もなく正しかったのだろう。とは今でも考えている。でも、それは『私』と言う『電車』の『正解』ではない。もっと、いい景色を見て欲しかった。見せてあげられなかった。それだけの話。

 

この考えに至るまで、実は随分と悩んだ。自分なりに本当は何がしたかったのか考えて、自分にあるモチベーターとしての側面を曲げてまで仕事が出来ない事にも気づき、今までのスタンスを変える様なきっかけにもなったと思う。

機会があったら、いつか話したい。今度はもっと早く走れる様に。

 

つい最近、全く別の環境で新しい出会いがあった。その人(Kとしよう)も創作活動に歩み始めている様で、今までとこれからの人生のスタンスに悩んでいる様だった。ちょうど数年前の私の様に。

なんとなく自分の知識が一助になる様な気がして、Kに歩み寄ろうとしている自分がいる。数年前のOみたいだ。優しさと利害の一致、相手への興味が入り交じる感情がフラッシュバックする。

『仕事を手伝ってくれる?』なんて言ってみれば、新しい世界と知恵と金銭を引き換えに感情を搾取する共依存が始まってしまうのではないか?

自分がそんな人間関係の断捨離(と言うと聞こえが悪いが)を済ませた後だったので、つい、君なりの正解のレールに上手く乗せてあげられるだろうか、と拙いコンピューターを回してしまうのだ。そんなもの、あるはずがないのに。断捨離される側に回りたくない臆病者の言い訳なのだ。こんな奴について行かなきゃ良かった、とまで思うかもしれない。すぐに離れてしまう様な縁をつなぎ止めて、一体私は何がしたいのか?
相手にとっての『よくないレール』にはなりたくない。Kを『ただ繰り返す日々の快速急行』にしたくない。

でもきっと正解の終わり方に、してみせることができたなら本望だ。

『どうせ終わりある縁だけど、生を受けたこの星で正解を探してみようか?』

 

始まってもいないくせに、何を書いているんだか。